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2010年7月14日水曜日

How many years in Tibet?

先日のTashiとの会話が興味深かったので、少し続きを。

Tashiはもともとチベット出身で、今はアメリカ人のフィアンセ(ミシガン大学Law School在籍)とAnn Arborで暮らしながら近くの短大に通って英語の勉強をしている(そこで私の妻と知り合った)。チベットには、優秀な学生を高校時代に選抜し、北京の大学に留学させる制度があるそうで、彼はその制度を通じて北京で数学を専攻、卒業後は中国北東部のある省の役人をしていたらしい。現在のフィアンセとは、彼女が留学生として北京に来ていたときに知り合ったのだとか。ちなみに、彼がアジアで一番好きな国は日本なのだそうだ。なぜなら日本はアジアで唯一、ダライ・ラマの公式訪問を受け入れた国だから。

彼は、短大で英語を勉強した後は、Rossでビジネスを学びたいという。何故?と聞くと、「ビジネスを通じてチベットを変えたい」という。でも、なぜ?、どういう風に?、どうやって?

中国政府は、国内の少数民族に対してアメとムチの双方を織り交ぜた支配を行っているが、そのアメの部分がビジネスや教育の分野における少数民族の優遇政策だ。その中には、少数民族の優秀な子弟に対して優先的に大学への入学を許可するなどの政策が含まれており、Tashiもこの政策の恩恵で北京で大学教育を受けた。一方でムチの部分としては、教育やビジネスの分野において中国語の使用を強制するというものがある。現在では、大学教育のみならず、チベットにおける小学校教育から中国語の使用が強制されており、また中国語が話せなければ職に就くことができない。この影響で、チベットでは本来の母国語であるチベット語が消滅の危機に瀕しているという。

彼は、チベットの若い世代がみんな中国語で考え、読み書きし、生活し始めることをチベット人のアイデンティティの喪失として捉えているようだ。また、それによって情報源が中国サイドに偏ってしまうことも大きな危険だと考えている。「中国政府は、長い時間をかけてチベットを中国に「同化」しようとしている。自分はそれを防ぎたい。だが、政治的な手段でそれを達成することは短期的には現実的ではない、それならば、チベットの子供たちに良質の教育の機会を与えることで、健全な批判的精神をチベット内に育み維持することに、自分は貢献したい」彼の話を乱暴に要約してしまうと、こういうことである。

私自身、彼の話を聞くまでは、チベットの現状がこのように深刻だとは全く知らなかった。しかし、それが果たしてビジネスとして成立しうるのか?また、仮にビジネスとして成立したとしても、中国政府が介入する可能性があり、クリアしなければならないハードルは山ほどあるであろうことが予想される。彼はそれも含めて学びたい、という。個人的に彼を応援したくなったし、将来を通して彼の夢がどうなるのか、見届けたいと思う。彼は、また色々相談したい、でもとりあえずはGMATを頑張るよ、と笑って帰っていった。

彼の話を聞きながら、中国が政治的にも経済的にも巨大な存在になっていく中で、ビジネスにおいても中国との付き合い方、またその周辺国との付き合い方を真剣に考えることは避けては通れない、と改めて感じた。

ちなみに、彼が言うには、中国の経済統計は全く信用できないのだそうだ。なぜなら、彼が数字を作って上司に提出すると、まずその上司が数字を水増しし、さらにその上司が水増しして中央政府に提出する、ということが日常的に横行しているからだという。では、最終的な経済統計はどれだけ水増しされているのか?歴史がいつか明らかにしてくれるだろう、だって。

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