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2010年12月25日土曜日

2010 Fall electives

2010秋学期が終了、早くもMBA生活の4分の3が終わってしまったわけで、過ぎ去るときのあまりの早さに焦りを覚えつつある今日この頃である。一年目でコア科目を終え、二年目となる今年は選択科目を履修しているのであるが、実際に受講して面白いと感じた、お勧めできる授業について簡単にご紹介したい。

Advanced Competitive Analysis – Strategy 669
Strategyの名物教授の一人であるProf. Ahujaによる授業です。MBAなら誰でもFive Forces等の基本的なフレームワークは知っていますが、この授業ではそれぞれのフレームワークが前提としているAssumption、原理原則を明らかにしつつ、いかに実戦で事業戦略の分析ツールとして使いこなしていくか、ということに主眼を置いています。また授業後半では分析過程だけではなく、その分析結果を使ってどのように新戦略の立案に繋げていくかという総合過程や、新戦略の実行面における課題分析についても取り扱いますので、分析力だけではなく総合力も鍛えられます。一応ケースディスカッションをベースとした授業なのですが、実際にはケースを題材にしたLectureという感じでAhuja本人が喋っている時間が一番長いです。しかし授業の構成や進め方は良く練られており、時折問題の本質を考えさせる非常に巧妙な質問が飛んでくるので気は抜けません。特に“Think carefully..”と言われたときには要注意です。ケースを注意深く読んで真剣に予習をしていったつもりでも教授の方が一枚も二枚も上手で毎回何らかの新たな発見がある、そんな授業です。Strategyに興味がある方ならミシガンでは必ず取るべき授業の一つだと思います。

New Venture Creation – ES 615
細かいこといわんと一度ベンチャーを立ち上げてみよう、というRossらしいクラスです。講師のJim Priceは既に何社ものベンチャーを成功裏に立ち上げた経験を持つ生粋のEntrepreneurであり、彼の意見や視点は非常に参考になります。プロジェクトを通じて彼のコンサルティングを受けられることがこの授業を取る最大の価値と言えます。授業では、アイディア出しから始まり、Business Planの作成、Investor Presentationの実施までをカバーしますが、実際にこの授業をきっかけにして立ち上がった事業がいくつもあります。私もインドで学習障害を持つ小学生向けの医療サービス提供ベンチャーの立ち上げに参加しましたが、インドにFounderがおり、実際に我々のBusiness Planを元に事業立ち上げを予定しています。Full-termを通して時間の殆どをプロジェクトのためのグループワークに費やすことになるので、どのクラスメイトとチームを組むか、どれだけ真剣にプロジェクトに取り組むかによってTake-awayが大きく変わってくると思います。実際に起業のアイディアがあるけど、どのように事業化してよいか悩んでいる方や、卒業後はベンチャーキャピタルで働きたい、もしくは大企業で新規事業を立ち上げたいと考えている方にはお勧めできる授業です。

Leadership in Changing Times – MO 611
Crisis Managementの権威、Gerald C. Mayersが教えるRossの名物授業の一つです。毎授業毎に危機に瀕している、もしくは危機を乗り切った経験のある会社に焦点を当てて、Role Playや議論を通じて、危機におけるLeaderの役割について学びます。また対象企業のCEOや役員クラスが実際に毎回の授業に出席しており、当時の状況やその時果たした役割について体験談を語ってくれるのも醍醐味の一つです。2010 Fallの授業ではFord, P&G, GE Technology, Toys R Us等を扱いました。毎授業のRole Playでは、特にPresentationを行う企業側の役割が当たっている時にはInvestor、Analystや Media等からの集中砲火を浴びるため、山程ある資料を読み込んで準備していかなければならず、正直1.5 Creditには見合わない負荷となります。しかしきちんと準備していって議論に参加したほう(Role Playに没入したほう)が学びが多いのも事実でした。米国においてLeadershipがどのようなものと考えられているのか、実際にどのような人が米国大企業のCEOとして働いているのか、またAnalystやMediaがどのように企業を見ているのか理解できる良い機会でもあります。将来大企業のCEO, CFOを張りたい方、Public Relation部門でのキャリアの可能性のある方には特に受講をお勧めします。

2010年11月24日水曜日

Caste in India

たまたまインド人の友人とインドにおけるカースト制度が話題になったので、そのうち面白かった話について備忘の意味で残しておきたい。

1. カーストはインド人の生活のあらゆる場面に影響しているが、少なくともその負の側面は変えていこうという取り組みはなされており、例えば大学受験においては、低いカースト出身の受験生のための優先枠が確保されているのだという。アメリカにおけるAffirmative actionのようなものか。しかし問題はそれだけで片付くほど単純でもなく、例えばカースト上のランクは高くても貧乏な家庭というのも一定の割合であるらしく、これらの家庭出身の学生にとっては、家庭が貧乏で教育の機会に恵まれず、かつ大学入試でもカーストが高いために不利な立場に立たされるという理不尽な状況になっているらしい。

2. Tataというインド最大規模の財閥があるが、Tataは採用、昇進等のプロセスにおいてカーストを全く考慮しない平等な人事制度をもっていることで有名だ。これは創業家が元々中東からの移民であり、インド内部のカーストから比較的自由であったことが少なからず影響しているらしいが、このことが外資系企業の多くがTataをビジネスパートナーに選ぶ要因になっているようだ。一方で、Tataは寄付や社会インフラの整備等を通じて、地域社会に貢献することも忘れてはおらず、Tataがビジネスをしている土地ではすこぶる評判がよい。大げさではなく、地域住民は神ではなくRatan Tata(Tata会長)に祈るのだとか。

2010年10月20日水曜日

Real option

Real Optionが面白い。

現在受講しているFinanceの授業"Options and Futures"では、最初の頃はoptionの種類やメカニズムの教科書的な説明が続きあまり面白くなかったのだが(ただし教授の教え方が上手いのが救い)、後半に入るにつれどんどん面白くなってきた。

特に目が覚めたのはリアルオプションの解説が始まった頃だ。リアルオプションは従来のNPV分析だけでは捉えきれないプロジェクト進捗における流動性の価値を計数的に評価する手法である。授業後に教授を訪れて聞いて見ると、実際に製薬会社における新薬開発やBoeing等の新型機製造プロジェクト、原油メジャーの大規模油田開発等において利用されているようだ。

当社においても、海外事業における規模拡張等の段階的な投資評価(特に製鉄所建設は何期かに分けて進捗させる場合が多いので)や、投資時期の意思決定の際の一助として利用できる余地はあると思われる(ただし実務面において、評価に耐えるだけの精度を担保できるか、実務が複雑になり過ぎないか等の課題はある)。

今後にさらに理解を深め、実務における応用の可能性を探っていきたい分野の一つである。

2010年10月4日月曜日

Project Pakdandi

New Venture Creationという授業で取り組むことになるプロジェクトが決まった。

インドにおいて、何らかの理由で学習障害を持つ子供達(主に小学生)に対して、初期診断とリハビリテーションロードマップを提供しようというのがアイディアで、どのようなビジネスモデルを組むかはこれから約2ヶ月をかけて検討し、ビジネスプランに仕上げていくことになる。

メンバーはインド人3人、中国人1人、そして私というアジアチームで取り組むことになった。

最終的にこのプロジェクトにした理由はやはりインドに興味があるということに尽きる。特に教育熱心な国だということは聞いているので、インドにおける教育や医療等の基本的なインフラについての理解を深めることは、将来インドでのビジネスに携わる可能性のある自分にとっては意義深いことと考えた。また、このプロジェクトは現地で協力者がおり、実際に起業を考えているので、創業メンバーの一人として関わることができれば、という下心があるのも事実である。

2010年9月30日木曜日

New Venture Creation -Lecture-

期待を持って参加したNew Venture Creationであるが、最初の2週間はレクチャーが続いた。

子曰く、Entrepreneurshipはベンチャー経営者だけではなく、大企業で社内ベンチャーに取り組む若手や海外で新規事業を立ち上げるマネジャーにも求められる資質であるが、その二つには大きな違いがある。ベンチャー経営者は失敗から学ぶ、もっといえば、ベンチャーはその本質からより不確実性の高い環境下でビジネスをするので、Trial&Errorを通じて成長することに学ぶことに慣れており、いい意味で失敗を恐れない。しかし一方で大企業のマネジャーにとって失敗は多くのケースで出世競争からの脱落を意味する。必然的に、彼らは多きな賭けを避け、痛みを伴うかも知れない改革よりも、前任者の築いた成果に小さな改善を加えていくことを優先するという。

これを聞いて思い出した。私ももともと大企業勤めが長かったのだが、企業の所謂内部昇進システムには入社当時から疑問を抱いていた。内部昇進システムからは経営者は育たず、ビジネスの一側面しか知らない人間を生み出しているのでははいかという思いがあったからである。

例えばあるプロジェクトに取り組むとき、社内横断チームを組むとする。営業、財務、法規、人事、原料購買等各Functionから人材を集めたとして、各セクションの若手マネジャーは各自の立場から意見を述べ仕事はするが、全体を統括するのはプロジェクトリーダーの仕事であり、意思決定をするのはさらに上の役員・部長クラスである。つまり実際に「経営してみる」という経験は本当の経営者クラスになるまで出来ないわけである。私は所詮人間は自分の体験した、または想像力の及ぶ範囲でしか考えることができないと思っているので、将来の経営者候補はなるべく若いうちに、遅くとも30台のうちに本物の「経営」の経験を積むべきだと考えている。考えてみてほしい、30台から何度も経営の経験を積んだ人と、役員になってから初めて「経営」をする人とでどれだけその「経営力」の厚みに差が出るか。

大企業単独ではなかなか若手にそういった経営ポストを用意することはできないかもしれない。しかし、グループ会社(子会社、孫会社)を含めた企業グループとして、出向人事だけでなく、人材育成を念頭に置いた戦略的なグループ企業人事を志向することで、親会社の管理ポジションと子会社の経営者ポジションを行き来するような人事を若手マネジャーに対して行うことができれば、若手の成長と組織の活性化にも貢献するのではないだろうか。

2010年9月22日水曜日

New Venture Creation -Introduction-

秋学期の授業の一つとして、"New Venture Creation"という授業を取っているがこれが結構面白い。

"Action-based learning"を標榜しているRossらしく、要は「実際にベンチャーつくっちゃえ!」というクラスである。授業を取っているビジネススクールの学生や他学部の学生からアイディアを募集し、そのアイディアに賛同する者同士でチームを組み、市場調査、ビジネスモデルの構築、ビジネスプランの作成、投資家へのプレゼンテーションまでを授業ではカバーする。有望なベンチャーにはスポンサーがついて起業のプロセスに進むこともあり、実際に過去にこの授業から産まれた会社がいくつもある。

教授はJim Priceで過去にいくつもベンチャーを立ち上げ、成功に導いたベテラン経営者であり、非常に"ナイスガイ"でもある。プロの教授ではないので、授業の進行には不備が見られることもあり、それが過去の授業評価を下げている要因だと思われるが(Rossでは、生徒による過去の授業評価をwebに公開している)、実際に彼のアドバイスを受けながらベンチャーを立ち上げる経験はエキサイティングに違いない(と期待している、まだ始まったばかりなので)。

さて、いくつかの案件の中から私が候補として選んだのは1. Ear protection device, 2. Pakdandi の二つである。 1はミシガン大学Engineering SchoolのPh.D学生が考案した、真空を利用した超高性能耳栓のプロジェクトである。私はもともと製造業のバックグラウンドもあるしアマチュアのパイロットでもあるので、自分の経験から、遮音機能と必要な会話のできるFlexibilityを備えたEar protection deviceには将来性があると思っており、一番興味のあるプロジェクトであった。しかし、教授にコンタクトを取ってみると、どうも製品のアイディアをもつ当のEngineering Schoolの学生本人がもう卒業してしまったらしい。よって第二候補のPakdandiのプロジェクトに参加することにした。

Pakdandiプロジェクトの概要は、インドの小学校~中学校の生徒を対象に、認知障害の早期発見スクリーニングテスト及び治療のためのロードマップを提供するというものである。もともとインドに興味があったことと、そのインドでベンチャーを立ち上げるという意味で二重に面白そうだと思い参加することにした。ちなみにPakdandiとは、インドのある地方の言葉で「あまり人が通りたがらない、森の中の小さな小道」を指すという。

チームはアメリカ人1、インド人2、中国人1、そして私の5人の多国籍チームである。どうなることやら、今から楽しみである。

2010年9月7日火曜日

My son was born!

昨日、U of Mの大学病院で無事に長男が誕生した。

日曜の夜に入院してから月曜の朝に産まれたので、かなり時間はかかったが、母子共に健康で何よりである。妻は慣れないアメリカの病院で文句を言いながらも頑張ってくれたし、娘も大人の都合で振り回されて大変だっただろう。

お世話になった病院のスタッフや遠くは日本から応援してくれた両家の両親、サポートしてくれた友人に含め、皆さんにありがとうございますと言いたい。

妻とも相談した結果日本ではなくアメリカで産むことになったのだが、将来この決断が吉と出るか凶と出るか、今はまだ分からない。ただ、少なくとも息子には二つのオプションを与えることができたのは確かである。彼が国籍を選択することになる22年後には世界はどうなっているであろうか。

ちなみに今日からビジネススクールの秋学期が始まる。ぎりぎり夏休みの間に産まれてくれて親孝行といえばそうなのだが、なにもこんなにギリギリにならなくてもいいのに。。一応、この事態は予想できたので、2-3週間分くらいの予習は貯めてあるのだが、今週はきっと病院に行ったり来たりで授業には出られないだろうな。。

2010年7月18日日曜日

Jogging in Ann Arbor

早朝から深夜まで、Ann Arborではジョギングしている人を本当によく見かけます。それに影響を受けたわけではありませんが、最近私もジョギングを始めました。8月末には二人目のBabyも生まれ、秋学期からは子供たちの面倒を見ながらの過酷なMBA生活が始まりますので、それに向けて体力をつけておくことが主な目的です。ついでに、社会人になってすっかり増えてしまった体重を元に戻すことができれば一石二鳥です。現在73kgあるのですが、自分のベスト体重は65kg(学生時代の平均体重)だと勝手に思っているので、それに戻すことが長期的な目標です。

さて、走り始めたはいいものの、7月のAnn Arborはとにかく暑い!昨年の同じ時期はすごく涼しくて過ごし易かったのですが、今年はまるで日本の夏のような暑さです。現地の人に聞いても、「今年はちょっと異常だね」という声が多いです。こういう年は冬が寒くなることが多いので不安になってしまいます。まあ今から心配してもしょうがないですが。昼間はちょっと外を走る気にはなれないので、娘を幼稚園に送ったあと午前中に走ることにしています。

走るコースは、アパートの周辺を適当に走ることにしているのですが、何日か走っていると足が痛くなってきてしまいました。最初は単に運動不足のせいかと思っていたのですが、どうもそうでもなさそうで、道が日本よりも硬い気がします。日本の道は大抵アスファルト舗装だったり、歩道はラバー舗装だったりしますが、こちらはコンクリートが多いのです。気になったので調べてみると、アスファルトの硬度はモース硬度で「2」となっている一方で、コンクリートは「3~4」とのこと。慣れれば問題ないのでしょうが、怪我をしてもつまらないので、少し走るコースを考えたほうがいいかも。。

ちなみに、Jogger同士親近感を抱くことが多いようで、走っていると他のJoggerから声をかけられることが多いです。すれ違いざまなので大した会話ができるわけでなく、一言二言挨拶をかわすだけですが。日本で言うと、ライダー同士がツーリング中にピースサインを交わすのに似た感覚です。

さあ、いつまでジョギング続けられるかな?

2010年7月14日水曜日

How many years in Tibet?

先日のTashiとの会話が興味深かったので、少し続きを。

Tashiはもともとチベット出身で、今はアメリカ人のフィアンセ(ミシガン大学Law School在籍)とAnn Arborで暮らしながら近くの短大に通って英語の勉強をしている(そこで私の妻と知り合った)。チベットには、優秀な学生を高校時代に選抜し、北京の大学に留学させる制度があるそうで、彼はその制度を通じて北京で数学を専攻、卒業後は中国北東部のある省の役人をしていたらしい。現在のフィアンセとは、彼女が留学生として北京に来ていたときに知り合ったのだとか。ちなみに、彼がアジアで一番好きな国は日本なのだそうだ。なぜなら日本はアジアで唯一、ダライ・ラマの公式訪問を受け入れた国だから。

彼は、短大で英語を勉強した後は、Rossでビジネスを学びたいという。何故?と聞くと、「ビジネスを通じてチベットを変えたい」という。でも、なぜ?、どういう風に?、どうやって?

中国政府は、国内の少数民族に対してアメとムチの双方を織り交ぜた支配を行っているが、そのアメの部分がビジネスや教育の分野における少数民族の優遇政策だ。その中には、少数民族の優秀な子弟に対して優先的に大学への入学を許可するなどの政策が含まれており、Tashiもこの政策の恩恵で北京で大学教育を受けた。一方でムチの部分としては、教育やビジネスの分野において中国語の使用を強制するというものがある。現在では、大学教育のみならず、チベットにおける小学校教育から中国語の使用が強制されており、また中国語が話せなければ職に就くことができない。この影響で、チベットでは本来の母国語であるチベット語が消滅の危機に瀕しているという。

彼は、チベットの若い世代がみんな中国語で考え、読み書きし、生活し始めることをチベット人のアイデンティティの喪失として捉えているようだ。また、それによって情報源が中国サイドに偏ってしまうことも大きな危険だと考えている。「中国政府は、長い時間をかけてチベットを中国に「同化」しようとしている。自分はそれを防ぎたい。だが、政治的な手段でそれを達成することは短期的には現実的ではない、それならば、チベットの子供たちに良質の教育の機会を与えることで、健全な批判的精神をチベット内に育み維持することに、自分は貢献したい」彼の話を乱暴に要約してしまうと、こういうことである。

私自身、彼の話を聞くまでは、チベットの現状がこのように深刻だとは全く知らなかった。しかし、それが果たしてビジネスとして成立しうるのか?また、仮にビジネスとして成立したとしても、中国政府が介入する可能性があり、クリアしなければならないハードルは山ほどあるであろうことが予想される。彼はそれも含めて学びたい、という。個人的に彼を応援したくなったし、将来を通して彼の夢がどうなるのか、見届けたいと思う。彼は、また色々相談したい、でもとりあえずはGMATを頑張るよ、と笑って帰っていった。

彼の話を聞きながら、中国が政治的にも経済的にも巨大な存在になっていく中で、ビジネスにおいても中国との付き合い方、またその周辺国との付き合い方を真剣に考えることは避けては通れない、と改めて感じた。

ちなみに、彼が言うには、中国の経済統計は全く信用できないのだそうだ。なぜなら、彼が数字を作って上司に提出すると、まずその上司が数字を水増しし、さらにその上司が水増しして中央政府に提出する、ということが日常的に横行しているからだという。では、最終的な経済統計はどれだけ水増しされているのか?歴史がいつか明らかにしてくれるだろう、だって。

2010年7月12日月曜日

Watching World Cup Final

つい先日、World Cupの決勝戦 (Netherlands-Spain)を観戦するために妻経由で知り合った友人のTashiと大学の近くにあるBuffalo Wingに繰り出した。少し前にArgentine-Germany戦を見に行ったときにはバーはガラガラで余裕で座れたので、今回も座れないことはないだろうとのんびり試合開始10分前に到着すると、これが立ち見が出るほどの盛況でビックリ!かたや赤、かたやオレンジのカラーで統一したにわか応援団があちこちで席を占領しており、我々はあえなく立ち見となってしまった。バーのおねさん曰く、「昨日の三位決定戦ではそうでもなかったのにねえ。。」とのこと。

多くは両国からの留学生の様だったが(こんなにいたんですねえ。。)、他の国からの留学生やアメリカ人も多数混じっていた模様(みんな好きですねえ。。あ、自分もか)。アメリカの中西部の小都市ででこういう体験ができるのもミシガン大学があるAnn Arborならではでしょうか。

さて、肝心の試合はイエローカード乱発で審判の判定にブーイングがでる場面もあったものの、延長戦までもつれこんだ挙句の劇的な決勝点による決着だっただけに大いに盛り上がり、楽しむことが出来ました。

Tashiは今年Rossを受験する予定なので、どうも受験関連で少し話したいことがあるようでしたが、試合が終わったら娘の面倒を見る約束を妻としていたので、それは次の機会にしてもらうことにして、早々に退散してしまいました。

そして帰宅後は、自宅近くの公園で、サッカーしながら娘としばらく遊んでいたのでした(我ながら影響されやすいやつ)。妻曰く、「ほんとに影響されやすいよね~、東京にいたときも格闘技とか見た後は急に腹筋運動はじめたりするし、世界陸上の後はジョギングだったし、男って単純ね」。はいはい、まあ、男なんてそんなもんですよ。


2010年7月4日日曜日

Battle Creek Air Show

独立記念日をどう過ごそうか、と考えた挙句、現地の人たちに混じっていかにもアメリカらしい過ごし方をしてみよう!ということで、行って来ました!Air Show!

日帰りで行ける範囲で、ということで、Ann Arborから車で西に1時間半程の距離にあるBattle Creekという町で催されたAir Showに行って来ました。朝11時頃から、国歌斉唱と、さらにはAir Showらしく、ヘリによる国旗掲揚からスタートです↓。


こんな感じでみんなパラソルやテントを立てて、芝生の上でのんびり過ごします↓。


我が家もMeijerで急遽買ったパラソルとアウトドアチェアを持参して見学です↓。これは大正解。炎天下の中でこれらがあるとないとでは大違いでした。


さて、期待していた米海軍のブルーエンジェルズは今回は来ないということで、代わって主役となったのは、、F-22 Raptor!その性能の高さから、空自が導入にこだわる一方で、米議会が日本への輸出を承認しなかったことから導入を果たせなかったいわくつきの、現時点で世界最高性能を誇ると言われている戦闘機↓。


実際そのManueverのDemoは鳥肌が立つほど凄かったです。アフターバーナー無しでのスーパークルーズ(音速巡航)を実現しながら、低速域での急旋回性能、急上昇性能も確保したとあって、これまで見たことの無い反則のようなManeuveringが続きます。うーん、こんなんもってこられたら、どこの国であれアメリカと戦って制空権を確保するのは至難の業だろうなあ。


ちなみに今回だけでなく、オバマ大統領がミシガン大学の卒業式に来たときも感じたのは、アメリカはやはり現役で戦争してる国なんだなあということ。またその戦争遂行を支えるだけの国内世論形成ができているのだということ。その根っこの部分には、実力で独立を勝ち取った歴史と、これからも実力でその独立と繁栄を維持していくという気概が広く共通認識として共有されていることがあるのだと改めて感じました。祝日に各家が軒先に星条旗を掲げたり、車に付けて走ったり、、日本だと右翼かと勘違いされそうになる行為ですが、それらがごく当たり前のこととして生活の中に浸透しています。そういえばカナダに行った時も同じような感じだったかな。

最後に、今回個人的に最も気になった機体をご紹介します↓。なんだか分かりますか?なんとジェットエンジンをキャノピーの後部に積んだグライダーです!しかもVテール!私は大学時代は航空部でグライダーの操縦訓練をしており、また卒業前に短期間米国に渡ってPrivate Pilotの免許を取るほど飛行機にはまっていたので、これを見ることができたのはうれしかったです。このグライダーもデモ飛行をしましたが、女性のフィギュアスケートを見るような、繊細なアクロバットには戦闘機のアクロとはまた違った良さがありました(マニアックですみません)。


炎天下の中パパに付き合ってくれたママとヒメ、ありがとうございました。

2010年6月20日日曜日

U-Pick at Ypsilanti

先日、妻が所属するRoss Partners Club(MBA生の妻、夫たちで結成する会)主催のU-Pick(今回はイチゴ狩り)に家族で行こう!ということになり、隣町のYpsilantiの郊外にある、Rowe's Produce Farmに行って来ました。

受付で採ったイチゴを入れる箱をもらい、いざスタートです!


当初は子供をイチゴ畑で遊ばせて、親はのんびりするつもりだったのですが、やってみるとこれが意外とはまるはまる。親(主にパパ)が一番張り切って収穫していたかもしれません。葉陰に隠れた宝石のような赤いイチゴを見つけたときのスリル、、たまりません。私の母の実家が古い農家で、子供のころは夏になるとよく母の実家の山にミカン狩りなどを手伝いに行ったものです。採り立てのミカンを絞って飲むミカンジュースはおいしかったなあ。そのころの童心がよみがえったのかも知れません。写真は娘と、娘そっちのけでイチゴ狩りに没頭するパパの背中です。


娘はというと、まだ熟れているイチゴと若いイチゴの区別がつかないので、見つけたら手当たり次第に摘みまくってます。でも楽しそう。


ここでは入場料とかはいらず、採って持ち帰る分だけ、最後に秤量して料金を払うシステム。こんなに取れました!期待した味は、、まあ、日本のイチゴと比べちゃダメですね。。それでもよく熟れたイチゴを青空の下そのままほおばるのはおいしかったです。

Grades in the first year

ようやくMAPの成績が確定して、一年目のプログラム全ての成績が出揃ったのでメモとして残しておく。

結果は、Excellent4つ、Good7つ、Pass1つとなった(Low Pass, Failは無し)。半分くらいはExcellentが取れるかと思っていたのだが、現実はやはりそう甘くはなかったようだ。

FinanceやAccountingなど数量系の科目の成績が良かった一方で、StrategyやMOなど、Class participationが重視される科目ではExcellentは取れなかった。これは二年目に向けての課題である。英語で聞いて議論を日本語に翻訳して理解して、日本語で考えたことをまた英語に翻訳して話す、となるとやはり時間がかかってしょうがない。やはりResponseのスピードを上げるためには、意識的に英語で考える訓練をしないとどうしようもないようである。

家族同伴で来ているとどうしても家族とは日本語で話すためか、思ったほど英語が上達していない(特にSpeaking)のも悩ましい(平日は現地の幼稚園に通っている娘の日本語教育のこともあり、妻と相談して家庭では日本語で話そうと決めている)。

次に時間管理。家族との時間、授業の予習・復習、チームミーティング、クラブ活動(社費なので就職活動は無し)等のTaskの優先順位をどうつけてスケジューリングするか、どこまで粘り、どこで見切るか。会社時代は、時間のある限りデータ収集し、分析を精緻化する癖があったため、気になることがあるとつい時間を気にせずに没頭してしまう悪癖がるので、これは意識してコントロールせねばなるまい。

Group workで貢献できたと思うのは、分析フレームワークの提示、Research、全体スケジューリング、Excelテクニックといったところか。また、一年目も後半になって気づいたのだが、しゃべりの量でnativeを圧倒することの難しいInternational Studentにとっては、むしろCriticalな質問を効果的に使って議論の方向性を誘導する、また議論が変な方向に外れかけたら修正する、というのが効果的のようだ。これは二年目のElectiveの中でも試してみたい。

また、意外なことにアメリカ人の多くは論理的な議論がそれほど得意ではない。"because.."と言いながら理由で無いことを延々としゃべり続けたり、時には、Causal relationshipとCorrelationの区別がついてないのではないかと思うような場面もあった。これはやはりAcademic backgroundが少し影響しているようである。Science backgroundを持つ人の方が、概して論理的なしゃべり方、考え方をするようである。これはどこの国でも同じかもしれない。

一方で、Presentationがうまい人は本当にうまい。元々天性の素質でうまい人と、十分に準備をして、ストーリーを構築して、それを上手に演じる人の二種類いるようだ。私は元々人前でしゃべるのは苦手ではないが得意でもないので、後者のアプローチは参考にしたい。

2010年5月30日日曜日

Frankenmuth

日帰り旅行第?弾、行って来ましたFrankenmuth。ここはAnn Arborから車で北に1時間半ほど行ったところにある小さな町(というか村?)で、もともとはドイツからの移民が中心となって作られた町だそうです。近くには有名なクリスマス用品の専門店や大きなアウトレットモールがあるそうなのですが、我々変わり者夫婦はそんなものには目もくれず、、今回の目的は「Hot Balloon Race(熱気球レース)」を観戦することなのでした。

朝早くから家を出発して会場と思しき場所に到着してみると。。おお!、すでにたくさん気球が浮かんでいるではないですか!っていうかこっちに近づいてきてる??


正直、直前までレースのルールを理解していなかったのですが、見ているうちに分かってきました。広い芝生の上に白いテープで十字が描かれていてそれが上空から見たTargetになっており、各選手は自分の乗った熱気球を操作してTargetに近づき、砂袋を投げます。できるだけ的に近いほうが高得点がもらえるようで、こういった的がレースエリアに何箇所か設定されていて、それらの合計得点で順位が決まるようです。上手な投擲(といっていいんでしょうか?)には見物客から歓声があがります。しかしこちらのスポーツは総じて観客との距離が近いですね。


風向きや他の気球との位置関係を考え、どう位置取りをするか、、先読みとコントロールの正確さが勝敗を決する要素なんでしょうね。などと考えつつ、ゆっくりとした気球の動きを見ながら持ってきたおにぎりをほおばったりして、こちらもゆっくり観戦です。と安心できたのもつかの間、ヒメ(娘)はすぐ飽きてしまい、走り回るので夫婦交代で追い掛け回すことに。。

その後も、併設の会場で開催されていたFrisbee Dogの大会を冷やかしたりしつつ、楽しく半日を過ごせました(ヒメはイヌの代わりに会場に乱入してフリスビー追いかけそうな勢いでしたが)。

最後に、なぜか近くの鳥小屋では孔雀が飼われていましたので記念撮影↓。ヒメは孔雀のオスに求愛されていました。。

2010年5月20日木曜日

MAP ~Review~

MAPが終わって少し時間が経ったところで、本プロジェクトを通じて学んだこと、改めて考えたことについて改めて振り返って気づいたことを何点か記しておきたい(忘れっぽいので。。)。

1. グローバル化の中での経営資源の有効活用の難しさ

経営のグローバル化を推し進める中で、また新規戦略分野に進出する中で、必要となる人・技術などの経営資源を技術者の引き抜きや他社の買収等で「要素」として獲得することは、資金さえあればそれほど難しいことではない。しかしながら、要素としてそれらを一応獲得することと、それらを実際に戦力として事業運営のレベルアップに有効活用できるかということはまた別の問題である。

新しいノウハウをどのようにトランスファーするのか、また既存事業とのシナジーをどのように具現化していくのかということに関して何らかの具体的な方策がないと、せっかくの経営資源も眠ったままになってしまうことを実例として学んだ。特に日本と違う点は、欧米系の会社では、専門技術やノウハウは会社ではなく個々の人に紐付いているという認識が一般的であり、業務における個人の責任範囲も比較的明確に線引きされているため、個人の専門知識や経験、コネクションはその個人の業務範囲内でしか生かされないという特長がある。これらを有効に横展開して全社のレベルアップに繋げる為にはインセンティブを含めた何らかの仕掛けが必要であろう。

2. 新マーケットからの要請がビジネスモデル見直しの要因となりうる

A社のこれまでのビジネスモデルは、大雑把に言えば、まず高性能・多機能な動力測定装置等のハードウェアやシミュレーションソフトウェアを開発・販売し、次にそれらをどのように使いこなして新車開発を効率的に行うかというコンサルティングサービスを提供する、というものであった。そしてこれらの組み合わせが、長い目で見れば新車開発期間の短縮やコスト削減といった効果を顧客企業にもたらしたからこそ、多少高くてもハードやソフトが売れたのである。

しかし、それだけでは対応できない事例も生まれてきてきている。例えばインドの自動車メーカーからは、案件毎に競争入札で最も安価なものを採用する方式や、コンサルティングだけをA社に依頼して、ハード・ソフトは他社の安価なものを流用するという方式が提案されているという。先述のGMが他社製の安価でシンプルなモーター動力測定装置を採用した例も含めて、ここから示唆されるのは、A社にとっては、これまでのパッケージ型のビジネスモデルが長い目で見て顧客の利益にもなることを顧客に納得させるか、さもなければ新たなニーズに対応できるように商品・サービス体系を柔軟に見直すことが求められているということである。例えば、機能を絞った安価なハードを商品メニューに加えるとか、ハードやソフトは自社製品にこだわらずオープン化した汎用レベルのものを組み合わせて提案し、そのかわりコンサルティングサービスで稼げるように料金体系を変更する、という考え方がありうる。

3. チーム運営について

今回プロジェクトにあたっては、私を含む4人のチームで臨んだ。試行錯誤で取り組んだ中、チームワークには成功も失敗もあり、その中からいくつかの教訓を学んだり、再確認することができた。

(先読みとスケジュール管理)
プロジェクトの期間は約二ヶ月であり、キックオフや最終プレゼンテーションの準備などを考えると、調査やインタビューに割ける時間は思った以上に短いため、二ヶ月間のスケジュール表と工程表を作成し、それを毎週リバイズしながら作業を進めていくこととした。スケジュール表には、主要なイベントと、それまでに何を準備しなければいけないかを書き込んだ。これをチーム全員で共有したことは他のメンバーにも好評であり、インタビューの前には質問表を完成させ先方に送付する、等基本的な準備を徹底できたことに加え、なにか抜けていることはないか、今のうちにしておくことは無いか等をお互いにチェックし合うことが出来たと考える。

(個々のチームメンバーのバランスをとり、長所を生かす)
本プロジェクトのチームメンバーは、エコノミスト出身のアメリカ人(以下A)、コンサルティングファーム出身のドイツ系アメリカ人(以下B)、自動車部品メーカー出身の中国人(以下C)、そして私の4人であった。それぞれバックグラウンドが全く異なるため、プロジェクトの異なる場面でそれぞれの長所を活かそうということはチーム内での共通理解でもあったし、実際に各人が期待された役割を果たそうと振舞った。例えば、業界動向調査やデータ収集・インタビュー質問作成はCと私が中心になって担当したし、最終プレゼンテーションの骨格はBが作成した。また、Aはスポンサー企業とのコミュニケーションを中心になって担った。
しかし、チーム内での議論となると、話がかみ合わないことが度々あった。自動車業界、またはHEVシステムに関する理解度の差や、最終プレゼンにどのレベルものを盛り込むのかというビジョンの違いがあった。Cは技術の詳細なレベルにまで下りて議論をしたがったし、Bは技術の各論よりも、戦略レベルでの方向性を問題にしたかった。お互いが感情的になることもあったが、私はスポンサーのニーズに応えるためには両方の要素が必要だと考えていたので、なるべくいいとこ取りをしようと提案し、結局、背景知識として必要であれば技術的な詳細や将来的技術動向についても検討し、その上で戦略的な方向性を考えるというところに落ち着いた。

(問題の兆候を早く読み取る)
仕事が終わった後も一緒に飲みに行って話をしたり、我が家での食事会に招待したりと、仕事以外でもチームの一体感を醸成しようと当初から心配りはしていたつもりであった。しかしプロジェクト後半に入り、チームにかかるプレッシャーや作業量が増大してくると一つの問題が発生した。Aが突然ミーティングに来なくなったのである。4人中1人が欠けることの影響は大きいのでBは怒り心頭であったが、Cと私でなだめて、一度みんなで話を聞いてみようということになった。

いつものミーティングルームに呼んで話を聞いてみると、家族に関わる個人的な問題ということであったが、どうも問題はそれだけではなさそうで、途中から業界の話がよく理解できなかったり、チーム内の議論についていけなくなったことにも原因があるようだ。残された期間も少なくなってきたので、Aの分担作業や資料作成の負荷を減らして調整することにしたが、結局彼は最終プレゼン資料作成の際も締切までに担当分を作成してこなかったため、土壇場で他の三人で対応した(そうなる可能性は予見できたので準備はしていた)。最終プレゼンはなんとか4人そろってこなしたものの、チーム一丸となっての達成感、というところには至らない結末となってしまったことは残念であった。

振り返ってみると、出張時のインタビューの議事録を作成していなかったり、ミーティングに遅刻してきたりと、Aの変調にはいくつかの兆候があったように思われる。その時には就職活動とかで忙しいのだろうとあまり気に留めなかったが、もっと早い時点で対策を取っていれば、事態を改善できていたかもしれないと悔やまれる。

(ロジックと個人の尊重がコミュニケーションの鍵)
 今回一緒にプロジェクトに取り組んだ4人は国籍もバックグラウンドもばらばらであり、かつ上下の命令系統がなく4人が完全にフラットな位置付けであったため、意見の相違がある場合はとことん議論して解決策を見出すしかなった。その際のコミュニケーションの基礎となったのは、事実と推測を切り分け、ロジックに基づいて議論をするということと、厳しい状況でも最後までお互いを個人として尊重することを忘れない、という二点である。恥ずかしながら、これまで「外国人」と会話するときにはどこか不自然に構えてしまうところがあったが、このことが腑に落ちてからは、肩の力が抜けて自然体でいられるようになったと感じている。

とりあえずそんなところ。またなにか思い出したら追加します。

2010年5月13日木曜日

Green Field Village

さて、パパが授業でヒイヒイ言っている中、慣れない初の外国暮らしで一年間パパと娘の生活を支えてくれたママへのお礼と息抜きをを兼ねて、近場にあるGreen Field Villageに遊びに行ってきました。なぜここにしたかと言うと、クラスメイトに「近場で家族で行けるいい場所ない?」と聞きまくったところ、多くの人がここを候補に挙げたからでした。

場所はAnn Arborから車で30分ほどのDearbornにある、Ford Museumのすぐ隣になります。自動車関連のみならず、開拓時代以来の古き良きアメリカの生活様式の歴史が展示されていると聞いていたので楽しみにしていました。

いざ入場してみると、中はこんな様子↓で、再現された古い町並みの中を馬車やT型フォードが走っています。従業員の方も18世紀を彷彿とさせる服装で統一しており、結構雰囲気が出ています。


当時の産業を支えた"Mother Machine"である旋盤工場を再現したもの↓。写真では分かりにくいですが、エンジンの駆動力を天井のシャフトに伝え、そこからベルト駆動で各旋盤の動力をとっていたようです。


アメリカの生んだ偉大な発明家。エジソン像とともに↓。なんでこんなとこに?と思ったら、ヘンリー・フォードが元々エジソンの研究所の従業員だったりと、二人には深いつながりがあったようですね。


中にはレストランがあり、伝統的なアメリカ料理が味わえます。当時の様子を再現するため、照明は各テーブルに置かれた蝋燭のみで、昼間でも暗いです↓。ただ、料理自体はすごくおいしかったです。妻も同感だったようで、「始めておいしいと思ったアメリカ料理」とのこと。それなりに楽しんでもらえたようで、来た甲斐がありました。


中はかなり広く、朝10時くらいに来て、夕方4時くらいまでいましたが、回りきれないほどの広さでした。最後に、この日のもう一つの目的である機関車トーマスへの体験搭乗と記念写真↓。


実はもうすぐ二歳になる娘が、大分言葉(単語)を覚えてきたのですが、「ばしゅ(バス)」と「ちしゃ(汽車)」の区別がつかないらしく、街中でバスを見かけるたび「ちしゃ!ちしゃ!」と連呼するので、よっしゃそれなら実物みせたろやないかい!とこの日を選んで連れて来たのでした。おかげでバスを「ちしゃ」とは言わなくなったのですが、今度は大型トラックのことを「ちしゃ!」と自信満々に言うようになりました。。確かに似てるけどね。。子育て道の先は長そうです。。

2010年4月28日水曜日

MAP ~Mission complete!~

今日クライアントのオフィスでFinal presentationを終え、無事MAP終了!

途中予想外のトラブルも色々あったけど、それも含めていい経験でした。チームメイト、アドバイザー、クライアント、インタビューに時間を割いてくれた業界関係各位に感謝です!

またMAPからのtake-awayについてはどこかで整理して書きたいと思います。少し時間が経ったほうが客観的な評価ができるかなともおもうので。

チームのみんな本当にお疲れ様!(ってみんなこのブログは見ていないと思われる)

2010年4月20日火曜日

MAP ~Europe Trip 2~

前回の続きで、欧州出張時に今回MAPプロジェクトについて考えたことなどを記しておきたい。

まず初めに、この一週間の出張を通じて、スポンサー企業(A社)の輪郭と強み弱みがすこしづつ見えてきたように思う。A社はもともとディーゼルエンジンの開発からスタートした会社であり、その技術力の高さから、内燃機関の開発において欧州自動車産業の重要なパートナーであり続け、特に世界市場での競争力を持つドイツ自動車メーカーとの関係は強固であった。その結果、内燃機関の開発及び車両駆動系との統合制御技術には現在でも大きな強みを持つ。

しかし一方でこのことは、A社にHEV技術への対応を遅らせる結果へとも繫がった。主要なパートナーであるドイツ自動車メーカーは、HEVを電気自動車(EV)普及までの繋ぎの技術に過ぎないと位置づけ、HEVの開発よりもむしろ既存のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンやトランスミッション技術の性能向上に経営資源を注いだからである。しかし、その間HEVの開発に継続的に取り組んできたトヨタやホンダの北米市場における成功(2009年実績では両社併せて北米HEV販売台数の80%以上のシェアを占める)や、発展途上国におけるHEV/EV開発加速化の動きを見て、欧米自動車メーカーもHEVモデル開発に本腰を入れ始めたことから、A社もHEV対応を加速せざるを得なくなり、2006年頃からHEVを戦略分野の一つに位置付け、重点的に戦力強化を開始した。以降、電気モーター・インバーター・バッテリー分野の専門家の中途採用強化、当該分野の研究開発会社の買収、自動車用バッテリーの製造開発会社の設立等の施策を矢継ぎ早に打ち出してきた。

しかしながら、現時点ではこれらの戦力強化の成果は、北米市場における顧客対応力の強化や関連製品・サービスの受注増という具体的な形ではまだ現れてはいないようである。

その要因はいくつかあろうが、第一には強化した戦力をまだ有効に使えていないということが挙げられる。例えば買収したドイツにある研究所の技術者のモーター分野における知見や業界におけるコネクションは大きな武器であると考えられるのだが、それらを他の地域に有効にトランスファーできていないどころか、北米の担当者はその内容すら知らないという状況であった。つまり、個人的なコネクションを通して以外に、全社で共有すべき新たな技術的知見やマーケット情報が横展開されていない。

第二には、異なる市場における異なるニーズに対応できていないという点である。例えば、A社が新規に開発・販売したモーター動力測定装置は、欧州では順調に受注が伸びているが、北米においてはまだ受注実績が殆ど無い。このあたりのA社の市場対応力と実際の顧客ニーズとの間のギャップを明らかにすることは、今回プロジェクトの中心的なテーマの一つでもあり、後の調査を通じて確認することになりそうだ。

2010年4月19日月曜日

MAP ~Europe Trip~

少し前になるが、MAPの欧州出張から帰国した。約一週間でスポンサー企業のオーストリア本社、ドイツの研究所・製造所を訪問して、情報収集やインタビュー漬けの毎日。ハードではあったが、内容的には充実した出張だったと思う。最終日にはなんとか一日フリーの時間を確保でき、ウィーンに日帰りで観光旅行をすることも出来たし。

ただ、帰り際にはちょっとしたハプニングも待ち構えていた。

その1
最終日近くなったときに、突然我々チームメンバーに、他のMAPチームからメールが届いた。「先週欧州出張したときフランクフルト空港にPC置き忘れてから取ってきて!」だって、しょうがないなあ。。国内線から国際線の乗り継ぎに2時間くらい待ち時間があったので、その間にLost&Foundに行って引取りの手続き。事前にPDFで送ってもらっておいた委任状を印刷して提出し、少し待った後で無事回収。やれやれ。

その2
フランクフルトからデトロイト行きの飛行機を待っていると、なんとその飛行機がオーバーブッキングとなってしまったとのこと!しかも我々4人のうち2人がまだ座席が確定しておらず、乗れるかどうか分からないという。帰国後のスケジュールもびっちりなのにそれは困るぞ!ということで、「我々は4人のチームで来ている、全員で帰れないと困る!」と主張し押し問答。30分程してようやく2人に座席が割り当てられ、なんとか全員一緒に帰れることになった。

しかし、Deltaさん、「キャンセルを申し出たお客様には1,000ドルのクーポン」ってのはケチくさくないか?どうせDeltaでしか使えないんだろうし。

ともあれ、いずれにしても無事帰ってくることができてよかった。ちなみに、出張の日程についても少し早めに設定していてよかったと思う。もう少し遅かったらアイスランド火山の噴火に巻き込まれて帰ってこられなかったかも知れない。

今回の出張でプロジェクトについて考えたことなど、内容については別の機会に改めてご紹介したいと思う。

2010年3月11日木曜日

MAP ~Kickoff~

いよいよ今週からMAP開始となり、今日はスポンサー企業との第一回目のミーティングを行った。このときまでに顔合わせの非公式な食事会は既に済ませていたのだが、先方のオフィスに出向くのはこれが始めてであった。今日の議題は、プロジェクトの目的及びScopeのすり合わせと、これから二ヶ月のスケジュールについての話し合い、及び機密保持契約の締結であった。

スポンサー企業(ここでは名前を明かせないため、今後A社と呼ぶことにする)の北米オフィスはAnn Arborから車で約30分程度のところにあり、当面はこの北米オフィスを拠点としてプロジェクトを進めるのだが、彼らのオーストリア本社及び近隣の研究所や製造拠点を訪問してのインタビューも予定に組み入れることになった。彼らの全社ベースでの経営資源を評価するためには、技術やノウハウの中枢となっているこれらの拠点の競争力を理解しておくことが不可欠だからだ。なあるべく早い段階での欧州出張を要望した結果、再来週から約1週間程度の出張となりそうである。せっかくなので前後いずれか一日程度は観光に充てられるといいのだが、こればかりはわがままを言うわけにはいかないだろうなあ。。

当面、北米オフィスには週3日程度出社し、それ以外の時間はビジネススクールにおいて、図書館などのリソースを利用した調査やチームミーティングに充てることとした。

前回も書いたかもしれないが、本プロジェクトのメンバーのバックグラウンドは、アメリカ人エコノミスト、ドイツ人経営コンサルタント、中国人メーカー技術者、そして日本人メーカー営業マンと国籍も職種も多彩である。それぞれの強みをプロジェクトの異なる局面で活かせればいいと思う。

今週はMAP開始に当たってのオリエンテーション的要素が強く、A社とのミーティング以外は、ビジネススクール主催の説明会やミーティングへの出席が中心となった。来週からはいろいろ本格的にMAP始動!である。

2010年1月30日土曜日

MAP ~Project決定~

かねてよりBiddingしていたMAPのプロジェクトが決定した。私はオーストリアに本拠を置く自動車関連計測機器の開発・製造会社(以下A社)を4人のチームで担当することとなった。

Biddingする際にも少し調べたのだが、この会社、オーナーが100%の株式を所有する非公開会社で財務諸表等が開示されておらず、財務面から経営内容を確認することができない。会社のWebsiteやビジネススクールのデータベースで調べてみると、特に欧州においてシェアが高く、自動車開発過程においてソフト面で重要な役割を果たしているようだ。すでに米国には進出しており(実際今回プロジェクトの直接の対面は北米オフィス)、近年は中国、インド等での市場を広げようとしている模様。

もうちょっとバックグラウンドの情報が欲しかったので、業界に詳しそうなクラスメイト(彼はトルコ出身で前職はフォードで生産管理やマーケティングをやっていた)に聞いてみることに。彼曰く、

1. 欧米では自動車開発過程に深く入り込んでおり、いくつかの完成車メーカーはA社無しでは新規のエンジン開発が出来ないほど(それらの完成車メーカーはマーケティング、調達、組立工程に注力しており、純技術的な課題解決にはA社のような外部のエンジニアリング会社を使っている)。
2. 特に強いのは膨大な開発データベースに支えられたベンチテスト~シミュレーションの能力と経験
3. コスト削減のため、完成車メーカー側に新車開発期間短縮ニーズが高まる中、存在感はますます高まっている。

面白い立ち位置の会社である。逆に日本での存在感があまり無い理由もここにあると思われる。日本ではこれらのExpertiseは主に完成車メーカーとTier1サプライヤーによって保持されていると考えられるので(最近は変わってきているのかもしれませんが)。

さて、チームメイトだが、みんなバックグラウンドが違い、面白い組み合わせになった。まず最年長のBは中国人で自動車業界での経験が長く、渡米直前はDelphiでSales Managerをやっていて、さらには中国で自分で小さい工場を経営していた経験もあるそう。実は彼とはサマースクールのMarketing Projectでも同じチームだったため、チームを組むのはこれで二回目である。

アメリカ人のCは元経済官僚でWashington DCでGDPとかのマクロ経済データ作成・分析をしていた。ただしKarmann Ghiaを所有し、自分でレストアする程の生粋のカーマニアで、自動車に対する情熱が抑えられなくなり、ついには自動車業界に転進するためのきっかけとしてMBAを選択したのだとか。アメリカ人には珍しく饒舌ではないが、いい人。

もう一人のアメリカ人のEは父親がドイツからの移住者で、本人もドイツとの二重国籍を保持。英語、スペイン語に堪能なのにドイツ語はあまり話せないようで、あまり期待しないでくれ、との本人弁。コンサル業界出身らしく、よくしゃべるし、パワーポイントの作成技能にはかなりの自信を持っている。

で、最後に私は日本の大手メーカー出身で主に営業と財務・経理のバックグラウンド。担当として自動車業界との直接の接点はなかったものの、かつて営業で扱ったことのある製品が近年自動車向けに今回プロジェクトと関連ある分野で適用拡大されているとの事で、昔を思い出しながら取り組むことになりそうである。

担当するテーマは、該社のある製品・サービス群の北米マーケット調査と一次的なマーケット戦略立案とのことだが、該社の企業文化、競争力、技術的・人的リソースに関する理解を深めるために、1週間と期間は短いがヨーロッパ出張も予定されている。

2010年1月11日月曜日

MAP ~Bidding~

ビジネススクールを受験して、何校か合格をもらった中で私が最終的にミシガンへの進学を決意した最大の理由がこのMAP (Multidisciplinary Action Projects)の存在であった。平たく言うと約二ヶ月弱のインターンシップがコア科目の一つとして一年目の最終学期に組み込まれているのである。これまで一つの会社でしか働いたことが無い私にとっては、是非留学期間中に他社でインターンをやってみたかったのだが、社費派遣のため、インターンは会社から禁止されている。よって、授業の一環としてインターン(のようなこと)ができるこの制度は私にとって理想的だったのである。

さて、そのMAPであるが、今年は最終的に120近いプロジェクトがアメリカ国内外の企業から学生に提供された。それでもMAPオフィスがかなり絞り込んだ結果だと言っていたので、元々のオファーはそれ以上あったということである。ミシガン大学にプロジェクトを依頼する会社側の動機としては、比較的安価にコンサルティングサービスを利用できるという面や、MAPを採用活動の一環として捉えている面があるようである(実際、MAPを通じてサマーインターンのオファーを得たという話も聞く)。

学生は、その120近いプロジェクトの中から自分の希望するTOP10プロジェクトを順位を付けて登録する。そしてMAPオフィスが学生の希望と会社側の希望、学生の職務バックグラウンド等を総合的に勘案してチームを組成するのである。

私はもともと製造業の国際展開に興味があったので、主にグローバル製造企業を中心にセレクトした。また、折角なのでこれまでとはまったく違った経験をするのも面白いなと思い、いくつかのスタートアップカンパニーもリストに加えておいた。

最終的にどの会社を担当することになったとしても、面白い経験になりそうで今から楽しみである。選考の結果は、1月下旬に判明する。

2010年1月10日日曜日

2010WinterA

Ross School of Businessでは、1年目の秋学期が主に必修科目の履修、冬学期の前半(Winter A)は必修に加えて選択科目も始まり、冬学期の後半(Winter B)はいよいよMAPプロジェクトのスタートとなる。今期はオペレーションマネジメント、管理会計等の必修科目に加え、企業価値評価やビジネスコミュニケーション等の選択科目を履修した。以下、主な授業の概要と特に印象に残った点について記しておきたい。

OMS552(オペレーションマネジメント)
オペレーションの役割は、企業が自社の競争優位性を具現化することであるとの考え方に基づき、製造業や流通業における生産管理や在庫管理に始まり、サービス業におけるサービス品質の維持・向上、統計的手法による品質管理(Six Sigma等)、Project Management等のテーマをカバーした。生産管理については、トヨタ式生産方式(TPS)が「世界で最も模倣されている、しかし完全に模倣することが難しいオペレーションモデル」として取り上げられ、製造業の分野のみならず、TPSを病院経営改善のツールとして導入した事例などが紹介された。また、5Sの考え方もその英語訳 (Sort, Stabilize, Shine, Standardize, Sustain)とともに導入されるなど、当該分野では日本発の知見が多く取り上げられた。在庫管理において新鮮だったのは、単にミニマム在庫を追求するのではなく、発注コストと在庫コスト(陳腐化、値下げ、評価減等のコスト)を考慮に入れた経済合理的な最適発注量と発注タイミングの考え方であったが、これは主に流通業におけるオペレーションを視野に入れたものと言える。また、在庫を持つ事は、異なる生産スケジュールで稼動する工程間のバッファーとして働く一方で、オペレーション上の課題を見えにくくすることから、これを在庫を持つことの機会コストとして認識する考え方がある。そこでむしろあえて低い在庫水準を設定したり、在庫の中身を精査することでオペレーション上の課題を浮かび上がらせ、工程実力の改善に繋げていく手法が議論されており、これは能動的在庫管理と呼ばれている(具体例の殆どが日本企業であり、米国における実例を聞くことは出来なかったが)。

ACC552(管理会計)
主に二つの目的、すなわち、①企業の経営上の意思決定や経済性評価に資するコスト情報の提供、②個人や部門の業績評価とインセンティブ付与といった内部管理上の定量情報の整備、のためにどのように管理会計システムを整備し、活用するかというテーマに即して、各授業毎にケース分析を通じて議論した。第一のコスト情報の整備については、Activity Based Costing(ABC)というコスト計算手法に基づいて実態コストを把握する手法が紹介された。また、どのようなコスト情報がどのような形で必要かについては、企業戦略(なにを実現したいか)によって異なるため、外部環境や戦略が大きく変わったときにはそれに応じて管理会計も見直しが必要であることを実例を通して検証した(小ロットによるコスト増を社内管理会計上反映していなかったため、小ロット注文ばかり集まってしまった企業の例など)。第二の業績評価については、異なる国・地域における事業の実績評価をどのように行うのか(営業利益・ ROI・EVA等のベンチマーキングによる相対評価、対予算での達成度評価等)、部門業績の最適化だけでなく、全社最適化を志向させるためにどのようなインセンティブ設定が必要か、などについて学んだ。また、売上や収益等の定量的評価項目はどうしても過去の短期業績評価に偏りがちであるので、将来に向けた事業戦略の仕込み、部下の教育、他部門へのノウハウの提供など、定性的評価を併せて用いたり(バランスド・スコアカード)、将来の業績に影響を与える先行指標の動向も考慮に入れた総合的評価を用いることを学んだ(Citibankの支店長業績評価の例等を参考に)。

FIN615(企業価値評価)
企業価値をどのようにして算定するのか、その理論的な基礎に加え、実際に投資銀行やPEファームが企業価値やオファー価格の算定を行う場合の実務について、手を動かしながら理解を深めたいと思い受講した。まず、基本的なEnterprise DCF法やIRRによる評価を再確認した上で、Economic Profit法やAPV(Adjusted Present Value)法等についても学習し、それぞれの評価方法の特徴と、どのようなケースで適用するべきか演習を通して確認した。次に、乗数法(Multiple)の概要、及び実際の企業買収における買収価格算定の実務について、講義とケース分析とを通じて学習した。企業価値評価の際の妥当な将来キャッシュフローの予測やシナジー効果の織込みについては、対象業界における知識や経験が必要とされるため、実際の企業買収における買収価格検討においては、直近実績(例えば直近12ヶ月)を元にした乗数法による評価が使われることが多いようである。ただし、乗数法による買収価格検討は短期業績の変動の影響を受けるため(特に短期の業績変動が激しい場合)、基準となる実績を平準化する必要があることや、たとえ同じ業界内の企業との比較であっても、財務構造(内部留保キャッシュの多寡)や設備の保有形態(自社取得かリースか)の違いが評価に歪みをもたらすため、比較の際には適切な補正が必要であることなどを学んだ。 なお、価値評価とは直接関係ないが、米国においては、企業買収に関する規制がそれぞれの州において異なるため、企業買収スキームは買収対象企業の設立準拠州法の規定を勘案して設計される必要がある。有名なのはデラウェア州で、NY証券取引所上場企業の約半数がデラウェア州法を準拠して設立されているそうである。また、ペンシルバニア州法も敵対的買収の手続きを厳格に定めているとして有名である。

LHC524(ビジネスコミュニケーション)
国際的なビジネスシチュエーションにおける効果的なコミュニケーションスキル(プレゼンテーション、E-mail、レポート作成)の向上を目指して受講した。授業の内容は、そもそも説得力ある効果的なコミュニケーションはどのような要素から成り立っているのか、という理論面から、実際のプレゼンテーションや文章作成の演習までをカバーしており、事前の予想以上に実践的であった。説得的であるとは、①自己の主張を具体的な事実やデータに基づいて論理的に組み立てること、②聞き手の特性や立場に応じて、相手が受け入れやすいように柔軟に議論を展開すること、の二つの要素から成り立っているとし、この二つの要素それぞれについて講義と演習を通して学習した。例えば、米国に進出した日本企業の現地法人従業員向け慰労パーティーで、日本人社長が業績改善に向けた奮起を呼びかけるケース、東南アジアに進出した米国企業の現地マネジャーが米国本社社長に自らの副社長昇進を意見具申するケース等の場面設定における演習を行った。これらのケースにおいては、価値観やビジョンの共有化だけでなく、むしろ相手にとって何が「得」なのか、メリットベースで説得の理屈を構築することが早道であり現実的である、というのが担当教授のスタイルであった。また、授業に参加した米国人や他国からの留学生との共同ワークを通して、各国のコミュニケーションスタイルの特徴についても理解を深めることができた。一方で、そうはいってもコミュニケーションスタイルは国や人種毎にステレオタイプで一括りにできるものではなく、個人差が非常に大きいことも改めて確認でき、興味深かった。例えば同じ米国人でも、直接的で断定的な表現を好む人ばかりではなく、「ここは言いにくいところだからもっとオブラートに包んで言った方がいい」等、非常に相手に気を使うタイプもいた。