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2011年4月2日土曜日

Life in the US

MBA取得のため渡米してから約一年半が経過したが、これまでの経験を踏まえ、これまでに気づいた米国社会の特徴や動向について、またその中で日本がどのように認識されているか、日々の生活や各種報道から感じたことを記しておきたい。

(米国は日本以上の学歴社会・コネ社会)
一般に米国企業の人事は実力主義と言われているが、それはあくまで会社に入社してからの話であって、特に一流といわれる企業への就職は学歴やネットワークがモノを言うようである。例えばMBA取得者の採用に関しても、特に投資銀行やコンサルティング会社などは特定のビジネススクール(所謂TOP校)からしか採用をしていない。また、公式の採用プロセスの前に出身大学のOBや現社員と個人的なネットワークを構築しておかなければならない。これは、多民族国家であることを背景として、学歴やコネクションくらいしかその人物の素性やポテンシャルを判断できる基準が存在しない、ということのようである。

(徹底した分業化)
企業の管理職から市役所の窓口係に至るまで、分業が実に徹底している。自分の業務範囲を明確に規定して、基本的にそれ以上のことはしようとしない傾向がある。例えば市役所の窓口でも、自分の勤務時間が終われば窓口に客が並んでいようが構わずに帰るし、次の担当者に引継ぎもしないので、また一から説明しなければならない。また自分の仕事ではないと判断したら “That’s not my job”と言って関連部署への申し送り等もあまりしない。背景には「自分の仕事はこの範囲内で、その仕事への対価としてこれだけの給与をもらっている」という明確な契約概念があると思われる。契約に規定されていない仕事をしても一文の得にもならない、というわけである。特に単純労働や比較的下位の担当者レベルにおいてその傾向が強く、上位のマネジャークラスになれば権限や担当領域も広がるので、融通が利くようになるが、それでもやはり横の情報展開や情報共有化は日本に比べると限られている。逆に言えばこのように人の仕事に口を挟まないことが各自の業務領域内での意思決定の速さに繫がっているともいえる。   

余談ではあるが、タバコ飲み仲間や同じスポーツジムに通っている仲間同士という非公式ネットワークがそれを補完する役割として機能している場合が多いようだ。また、企業によってはホワイトカラーとブルーカラーも厳格に区分されている。GMなどは最近まで一つの工場内にホワイトカラー用とブルーカラー用それぞれに別々の専用トイレを設置していた程である。

(NGO・ボランティア活動が盛ん)
分業化が徹底しているのは個人のレベルだけではなく、企業部門全体としても同じである。資本主義の枠組みの中で企業部門は雇用を創出し、利益を追求することに注力すべきと一般的には考えられており(もちろんCSRに力を入れている企業もあるが)、環境アセスメントや地域活動等はNGO・NPO・ボランティア等が大きな役割を担っている。NGO・NPOで活躍する人材にも専門性に応じてかなりの給与水準が担保されており、それらの活動は財源面では個人や団体の寄付によって支えられている。企業部門とNGO・NPO間の人材の流動性も高いようだ。また、ボランティアが非常に盛んで、学生や退職者の多くは何らかの形でボランティア活動に関わっている。それらのボランティアは学校等を中心とした地域社会をベースにしている場合もあれば、教会に代表される宗教コミュニティや特定の人種コミュニティ、退役軍人コミュニティ等をベースに行われている場合も多い。

(産業構造の変化)
米国における2010年12月の失業率は9.4%となり、2009年5月以来の低水準にまで改善した。オバマ大統領が新規事業の育成による雇用の創出を政策目標に掲げて取り組んでおり、主に連邦政府の補助金及び州政府独自の補助金を通じて産業構造の転換を促している。例えばミシガン州においては、エネルギー分野で交付された連邦政府の補助金のうち大部分(約13.5億ドル)を州内の企業が受給し、自動車分野における環境対応力強化や再生可能エネルギー分野における競争力強化に取り組んでいる。また州政府も独自の優遇税制策を打ち出し、同分野での製造拠点・研究開発拠点投資を州内に呼び込んでおり、リストラによりBig Three等を早期退職した技術者たちの新たな雇用の受け皿になりつつあるようだ。ただし、新規産業の育成は元々2020年や2030年までのロングスパンで効果が発現することが見込まれており、足元の目に見える成果に繫がっているかどうかは明確ではなく、オバマ大統領への支持率が下落する要因の一つとなった。

(アメリカにとって日常となった戦争)
2001年の9.11テロ事件から今年で10年目になるが、テロとの戦いはベトナム戦争以上の長期化の様相を見せており、アメリカにとって戦争状態の継続は最早日常となった観がある。Veterans’ Dayには子供達は従軍兵士たちに「国を守ってくれてありがとう」と感謝のカードを送り、独立記念日には多くの家が軒先に合衆国国旗を掲げ、車は国旗をたなびかせて走り、各地で戦闘機がデモ飛行を行う。戦争の長期化にはリベラルから反対の声も多いが、自主独立の伝統や、自国の国益には敏感な国民性を反映して、国益にかなう戦争の遂行は支払う犠牲とのバランスが取れていれば許容される土壌がある。

(移民の流入とさらなる多民族国家化の進展)
現在でも年間百万人を超える数の移民が米国に流入している。特にヒスパニック系住民の人口は現在4千万人程度で国民全体の1割強を占めるが、2050年までには全体の25%をヒスパニック系住民が占めることになるという推計もある。現在でも多くの消費材や食品のパッケージ表記は英語とスペイン語の併記になっているが、さらにスペイン語人口が増えると予想されており、高校での第二外国語の選択でもスペイン語を選択する若者が増えているようだ。この増加傾向は米国政治にも徐々にインパクトを与えつつあり、既にメキシコと国境を接するアリゾナ州等では都市部における急速な不法移民の増加が犯罪増加に繫がっており、州独自で入国規制の強化を検討するなど、連邦政府との軋轢を生む要因になっている。また伝統的に民主党はヒスパニック系に強いと言われており、先の中間選挙でティーパーティーや共和党が躍進する中、ヒスパニック系住民の増加するコロラド州では民主党候補が勝利している。

ビジネススクールの中に目を転じると、一学年500人のうち3割程度が米国以外からの留学生であるが、7割の米国人の中には親の世代からアメリカに居住をはじめた日系二世、チャイニーズアメリカン、海外居住インド人等が多く含まれており、彼らを含めるとInternational Backgroundを持つ学生は過半以上に上ると推定される。また、留学生の中で大きなシェアを占めるのはインド系、中国系、ブラジルを中心とした南米系、次に韓国人である。

インド・中国・南米は人口規模の大きさからも留学生が多いのは自然であるが、韓国からの留学生の多さは中国以外の他のアジア各国と比べても際立っている(Class of 2011では、日本5名、台湾4名、タイ3名等であるのに対し韓国だけで15名程度の留学生がいる)。韓国人の友人に聞いたところ、韓国自体の内需の小ささや近接する日本や中国とのライバル関係から、外に成長を求める志向が韓国企業にはあり、企業が求める人材がグローバル化していることと、それに対応するように激化する就職競争の中で留学志向が高まっているのだという。

(なくならない人種差別)
アメリカ全体の黒人の人口比はおよそ12%であるが、ビジネススクールの学生には驚くほど黒人が少ない。一方で特定の職業(清掃員やバス・タクシー運転手等)には黒人の占める割合が著しく高く、人種毎に職業が固定化されている観すらある。スポーツの世界でも、国民的スポーツである野球やポジション毎に分業が明確になっているフットボールを除くと、例えばアイスホッケーは白人のスポーツ、バスケットボールは黒人のスポーツと区分けが明確である。Ann Arborのような国際化した学園都市では明示的に差別を匂わせるようなことは誰も口に出しては言わないし、本人の努力と周囲の理解次第で克服は可能であると言われるが、街中の現実を見れば明らかなように人種の違いに根ざした差別意識は社会の色々な場面で根強く残っていると感じざるをえない。

(日本への関心)
一昔前の日本脅威論といったものは完全に影を潜め、むしろ米国でも不況が長引く中で「日本の二の舞になるな」といった論調が支配的である。米国にいても中国の存在感が政治・経済両面において高まっているのは明らかに感じられ、米国企業のアジア観は完全に成長マーケットもしくはビジネスパートナーとしての中国を中心に位置づける見方にシフトしており、日本とは是々非々で付き合っていくという見方が多いと聞く。ビジネススクールにおけるアジア関連のシンポジウムや国際会議においても話題の中心となるのは中国との付き合い方である。

昨年米国で最も注目された日本関連の話題はなんと言ってもトヨタのリコール問題であった。最初はメディアや運輸省が中心となってトヨタを叩きに叩いたが、事態が落ち着いてくると同情的な声も出始め、ケンタッキー州などトヨタが生産拠点を置く州の知事達は冷静な判断を求める書簡を議会に提出するなどしており、トヨタの現地化の度合いが伺える。冷静な意見の代表的なものとしては、「リコールには当然問題はあるが、トヨタはそれほど悪質ではない。米政府部門とのコミュニケーション、トヨタ内部での日本本社と米国現地法人間のコミュニケーションが有効に機能しなかったことが問題を必要以上に悪化させた(元米国トヨタ販売担当役員、現Ford役員)」というものがある。ただし、米国市場において「品質のトヨタ」のブランドイメージが深く傷ついたのは事実であり、Big Threeによるトヨタ車からの買い替えを狙った販売攻勢もあり、販売の回復には相当時間がかかるだろうと言われている。

政治経済面で日本の影が薄くなっている一方で、日本の文化についてはいまだ関心が高いようだ。武士道といった伝統文化だけでなく、食文化や漫画・アニメーションといった現代文化についても人気が高く、Ann Arborの公立図書館では日本の漫画やコミック数多く取り揃えられている。昨年日本人在校生が中心となってミシガン大学内で「Business in Japan」という名目で日本のビジネス環境及び文化紹介イベントを開催したが大盛況であった。また昨年末には日本の「草食系男子」が“Grass Eater”としてメディアで紹介され話題ともなった。

The Economist誌において昨年11月に組まれた日本特集では、少子化・超高齢化社会の到来といったこれから他の先進国も直面するであろう問題に日本がどう対応してどのような社会を築いていくのか、またその中で日本企業がどのような形で復活するかが注目されていた(というか、お手並み拝見、といったところか)。また政治面では、尖閣諸島の問題など、膨張する中国に日本がどう対応していくのか、同じく中国との付き合いに苦労している周辺諸国からも注目されていると感じる。尖閣諸島での日本の対応は東南アジアから来た学生たちには不評で、「あそこで日本が踏ん張っていれば、東南アジア諸国は日本を支持したはずだ」との声が強かった。少人数の声だけで判断することは出来ないが、どうやら中国は様々な国から恐れられているが、尊敬はされていないようだ。

2011年3月11日金曜日

The largest earthquake hit Japan

東北地方仙台沖を震源としたM8.8の地震が日本を襲いました。
以下日本に住む父親からの情報です。

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11日午後2:46頃三陸沖でM8.8の超巨大地震が発生しました。観測史上始まって以来の最大らしいです。3:15頃には茨城県沖でM7級の地震が発生。日本列島に津波がおしよせています。

現在、東京都心では交通機関が麻痺状態で、復旧の目途は立っていません。職場から帰る人で歩道は人であふれているようです。空港の発着も見合わせているようです。東京や大阪でも被害が出ているようですが、詳細は不明です。福島原発は緊急停止し、炉心冷却用の非常用のディーゼル発電機3基も使えなくなっているようです。東北の各県では、大きな被害が出ているようですが、詳細は不明です。阪神大震災の150倍のエネルギーだそうです。震源は20kmの長さに渡っているようです。

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地震・津波だけでも相当の被害が出ているようですが、放射能漏れの可能性もあるようで怖いですね。
妻が福島の友人にTwitterで連絡を取ろうとしているようですがまだ連絡がつかないようです。

私は阪神大震災の時京都にいましたが、地震の規模としてはそれよりずっと大きいようですね。今はこれ以上被害が広がらないよう祈るばかりです。

皆様のご家族のご無事をお祈りいたします。