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2010年4月20日火曜日

MAP ~Europe Trip 2~

前回の続きで、欧州出張時に今回MAPプロジェクトについて考えたことなどを記しておきたい。

まず初めに、この一週間の出張を通じて、スポンサー企業(A社)の輪郭と強み弱みがすこしづつ見えてきたように思う。A社はもともとディーゼルエンジンの開発からスタートした会社であり、その技術力の高さから、内燃機関の開発において欧州自動車産業の重要なパートナーであり続け、特に世界市場での競争力を持つドイツ自動車メーカーとの関係は強固であった。その結果、内燃機関の開発及び車両駆動系との統合制御技術には現在でも大きな強みを持つ。

しかし一方でこのことは、A社にHEV技術への対応を遅らせる結果へとも繫がった。主要なパートナーであるドイツ自動車メーカーは、HEVを電気自動車(EV)普及までの繋ぎの技術に過ぎないと位置づけ、HEVの開発よりもむしろ既存のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンやトランスミッション技術の性能向上に経営資源を注いだからである。しかし、その間HEVの開発に継続的に取り組んできたトヨタやホンダの北米市場における成功(2009年実績では両社併せて北米HEV販売台数の80%以上のシェアを占める)や、発展途上国におけるHEV/EV開発加速化の動きを見て、欧米自動車メーカーもHEVモデル開発に本腰を入れ始めたことから、A社もHEV対応を加速せざるを得なくなり、2006年頃からHEVを戦略分野の一つに位置付け、重点的に戦力強化を開始した。以降、電気モーター・インバーター・バッテリー分野の専門家の中途採用強化、当該分野の研究開発会社の買収、自動車用バッテリーの製造開発会社の設立等の施策を矢継ぎ早に打ち出してきた。

しかしながら、現時点ではこれらの戦力強化の成果は、北米市場における顧客対応力の強化や関連製品・サービスの受注増という具体的な形ではまだ現れてはいないようである。

その要因はいくつかあろうが、第一には強化した戦力をまだ有効に使えていないということが挙げられる。例えば買収したドイツにある研究所の技術者のモーター分野における知見や業界におけるコネクションは大きな武器であると考えられるのだが、それらを他の地域に有効にトランスファーできていないどころか、北米の担当者はその内容すら知らないという状況であった。つまり、個人的なコネクションを通して以外に、全社で共有すべき新たな技術的知見やマーケット情報が横展開されていない。

第二には、異なる市場における異なるニーズに対応できていないという点である。例えば、A社が新規に開発・販売したモーター動力測定装置は、欧州では順調に受注が伸びているが、北米においてはまだ受注実績が殆ど無い。このあたりのA社の市場対応力と実際の顧客ニーズとの間のギャップを明らかにすることは、今回プロジェクトの中心的なテーマの一つでもあり、後の調査を通じて確認することになりそうだ。

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